月経前になると気分が落ち込み、イライラする、不安感がある…というような症状になる人も多いですよね。これが月経前症候群の特徴です。「漢方薬は女性の味方」と言われているとおり、月経前症候群には漢方薬が有効です。今回は月経前症候群に効果のある漢方薬についてまとめました。
1.月経前症候群の様々な症状
月経前症候群は症状が多様で個人差が大きく、その症状の程度も軽い人から重い人までいます。
代表的な症状は次のようなものです。
- 身体的症状・・・乳房の張り、頭痛、下腹部痛、むくみ、めまい、脱力感、肌荒れ、耳鳴り、腰痛、ニキビ、下痢、吐き気、手足のしびれ、食欲の変化
- 精神症状・・・イライラする、うつ、悲壮感、不安感、すぐカッとなる、不眠・過眠、集中力の低下
- 行動の異常・・・仕事ができない、物忘れ、引きこもり、涙もろい、行動にむらがでる
など、症状は多岐にわたります。
2.月経前症候群における漢方の考え方
漢方の考え方には「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という概念があり「月経前症候群」はこの「気・血・水」のバランスが全て乱れている状態と考えられています。
漢方医学では先に上げた症状も、この気血水のバランスの乱れによって起こっていると考えられます。
またそれに加えて、血の異常を指す「お血」、水の異常である「水毒」、気の異常である「気滞」「気逆」などが複合的に起こっているものと考えられます。
例えば「お血」は血液循環が滞っている状態とされ、頭痛や肩こりなどの身体症状をもたらします。
この「お血」状態が解消されることで様々な症状が緩和されるというわけです。
漢方薬は一度に複数の症状がある月経前症候群のような症状に向いています。
漢方は個人個人に向いている処方をするため問診・腹診などをもとに、その人の体質や気・血・水のどこに問題があるかも考えられます。
例えば「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」という漢方薬はお血が強く、比較的体格がしっかりしている人に向いており、気の異常が顕著で体力のある人には「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」があげられます。
次の項で、それぞれの症状にあった漢方薬をご説明します。
3. 月経前症候群に効果のある漢方薬
月経前症候群の症状と「気・血・水」の考え方によって分けたタイプ別の漢方薬をご紹介します。
3-1.肩こり・のぼせ・腹痛がある(お血タイプ)
3-1-1.桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
便秘、精神不安、イライラ、頭痛、腰痛などの月経前症候群の症状全般に用いられる漢方です。
左下腹部に圧痛があり、冷えやのぼせの傾向がある方に向いています。
3-1-2.桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
下腹部痛、冷え、月経障害、肩こり、めまいに効果があります。
お血の障害に処方されます。
3-1-3.温経湯(うんけいとう)
体力が比較的弱く、腹部膨満感ほてり、のぼせなどの症状のある方に向いています。
腰痛、下痢などにも効果があります。
参考文献:疾患・症候別漢方薬最新ガイド/西村 甲 著
3-1-4.女神散(にょしんさん)
体力が中程度でめまい、のぼせ、不眠などの不定愁訴の改善に効果があります。
参考文献:疾患・症候別漢方薬最新ガイド/西村 甲 著
3-2.体が重く、めまいや嘔吐がある(水滞タイプ)
3-2-1.当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
月経痛、貧血、めまい、むくみなどに効果があります。
むくみやすく貧血気味の虚弱体質の方に向いています。
3-2-2.五苓散(ごれいさん)
むくみや吐き気、頭痛・めまいなどのある方に効果があります。
3-2-3.防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
むくみや多汗、倦怠感に効果があります。
水肥り体質で色白で、体力が低下している方に向いています。
3-3.神経症状や不眠がある(気逆、気うつ、気虚タイプ)
3-3-1.加味逍遥散(かみしょうようさん)
冷え性、不眠症、血の道症などに効果があります。
肩こりや、めまい、頭痛などのある方に。
3-3-2.抑肝散(よくかんさん)
神経症、不眠に効果があります。
イライラ怒りっぽく、攻撃性の強い方や不眠傾向のある方に向いています。
3-3-3.半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安神経症や不眠などに効果があります。
神経質で精神不安のある方に向いています。
4.漢方薬の飲み方
一般的に漢方薬は「食間」、つまり食事と食事の間のお腹が空で吸収されやすい時期に飲みます。
顆粒タイプの場合は白湯で人肌にさまして飲むのがよいでしょう。
胃腸が弱い人で空腹時の服用は胃に障るという場合は食後に服用しましょう。
基本的には1日3回ですが、昼の服用だけが難しいという場合は2回量に分け、1回1包半ずつ朝晩で服用する方法でも構いません。
5.漢方薬の副作用
漢方薬の副作用は少ないイメージですが、まったく無い訳ではありません。
通常の食事をとったときと同じようにアレルギーのような反応が起きる場合もあります。
また西洋薬との併用もできる場合がほとんどですが、稀に気持ちが悪くなったり、めまいがすることなどもありますから、飲み合わせなどは医師、薬剤師に相談しましょう。
また自分の体質に合っていないものを飲み続けても効能が期待できませんので、1~2カ月で効果が現れない場合は漢方医などに相談しましょう。
6.漢方薬の購入方法
月経前症候群で病院を受診したときに、医師に漢方薬が希望と伝えれば漢方薬のなかから症状にあったものを処方してくれます。
また医療機関で処方される他に、ドラッグストアや通信販売などでも購入することができます。
漢方の専門薬局では市販のものに比べて、高額になりますが煎じ薬を購入することもできます。
漢方薬局では処方も人によって違うので、相談して処方を変えてくれるメリットもあります。
参考文献:疾患・症候別漢方薬最新ガイド/西村 甲 著
まとめ
月経前症候群に効果のある漢方薬についてまとめました。症状やタイプによって選ぶ漢方薬が違いますから参考にしてください。